出光美術館『茶の湯のうつわ』展のレビューと見どころ紹介

出光美術館『茶の湯のうつわー和漢の世界』展 レビューとご紹介

最終更新日:2017年4月22日

2017年春、茶の湯関連の展覧会第3弾『茶の湯のうつわー和漢の世界』展にいってきました。

トーハクの『茶の湯』
近代美術館の『茶碗の中の宇宙』
そして、出光美術館の『茶の湯のうつわー和漢の世界』
ついでに、畠山記念館の『茶の湯の名品』

現在東京では、「茶の湯」関連の展覧会が競い合うように開催中です!
ついでに、滋賀県の佐川美術館では「樂吉左衞門館10周年 樂吉左衞門展」が開催中。

「茶の湯のうつわー和漢の世界」展は、事前情報がとても少なく開催される着前まで内容がよくわかりませんでした。

会場は東京駅と皇居の間、帝国劇場のビルにある『出光美術館』です。
常設展がない美術館で、私も久しぶりに来ました。
入り口は帝国劇場のチケット売り場の並び。
エレベーターで9階に上がればそこが美術館。

東京国立博物館や国立近代美術館とは違ってゆっくり鑑賞できます。
出光美術館に常設展はありませんが、陶片展示室とルオーの作品が常設されています。
とくに陶片は茶の湯と関わりが深いので、展覧会をみたあとは是非立ち寄ってみてください。
展示室を抜けると、9階の立地を活かした皇居を望む休憩所があります。
お茶も自由に飲めてソファでゆっくりできます。

『茶の湯のうつわー和漢の世界』展 レビュー

ひとことで言うと、茶の湯や茶碗を知らない人でもわかりやすい展示内容となっています。
トーハクの『茶の湯』展で展示されているような「超有名な茶碗」はありませんが、こちらも名椀が揃っていますし、なによりわかりやすい。


展示は全部で5つのエリアに別れています。
それぞれのエリアでそれぞれ特徴的な「茶の湯のうつわ」が展示されているので、素人目にも違いがわかります。

茶碗が良く分からない方はもちろん、茶碗を見飽きたマニアックな方にもおすすめできます。

展示紹介

第1章「一楽二萩三唐津」
第2章「京焼 ─古典へのまなざし、そして前衛的うつわへ」
第3章「愛でられる漢のうつわ ─唐物・高麗・安南」
第4章「懐石、宴のうつわ」
第5章「煎茶の世界」

と5つのエリアに別れています。

一楽二萩三唐津」は、佗茶の茶碗を格付けした言葉。
「樂茶碗」が最上、「萩茶碗」がその次、最後に「唐津茶碗」。
この3種類の茶碗は、佗茶に使う茶碗として重んじられてきました。

「一楽二萩三唐津」の言葉のとおりの展示となっていて、よく知らなくてもそれぞれの茶碗がどんな茶碗なのかがわかります。


これは、黒樂茶碗「此花」
樂家3代目「道入(ノンコウ)」の作品です。
ノンコウは樂家歴代の中で最も天才と呼ばれる人で、現代でいう「アーティスト」としての陶芸家のはしりともいえる人です。


こちらは樂家4代目一入(いちにゅう)の黒樂茶碗。
一入は道入の長男です。
黒樂の黒い釉薬の上に朱色の釉が絶妙な景色となっていて、私も好きな一椀です。
この椀をみて、「茶碗の中の宇宙 樂家一子相伝の芸術」展で展示されている次期(16代目)樂家当主となる予定の「篤人」さんの作品(下記)に近いものを感じました。


こちらは、5代目宗入の黒樂茶碗「鬼の頭」
びっくりしました。
こんな樂茶碗があったんですね。
写真ではわかりませんが、とっても大きいです。
「鬼の頭」という銘がしっくりくる茶碗です。
宗入は一入の養子として樂家を継ぎましたが、尾形光琳・尾形乾山の従兄弟です。


樂家十一代目慶入の黒樂茶碗「餘光(よこう)」
富士山の光をあらわした作品のようですが、「餘光」という言葉には先人の名声が後にまで影響を与えるという意味もあります。
富士山といえば日本の象徴でもあります。
幕末動乱から明治初期という茶の湯・茶陶の衰退期に「樂家」を継いだ慶入の意思が込められているようにも感じます。

ほかにも樂茶碗の名品が展示されています。


次に「萩」。
現在の山口県萩市で焼かれた茶碗の総称を萩焼といいますが、秀吉の朝鮮出兵の際に連れ帰ってきた陶工がルーツとなっています。
毛利氏の御用窯として発展しました。

現代陶工では三輪壽雪や三輪休雪(当代は12代目)が萩焼の陶工として知られていますが、展示されている作品にも彼らの「鬼萩」「雪萩」と通称される茶碗の源流がみてとれます。


こちらの萩茶碗は、藁灰釉や長石釉がかけられた特徴的な萩焼の一椀です。
切り高台と、腰と高台が綺麗に繋がる曲線が美しい。


萩茶碗「雪獅子」
口縁や全体のゆがみ、ヘラ削りのあと、切り込まれた高台など、明確な意思をもって作陶された織部風の萩茶碗の名椀。

唐津焼きは、肥前で焼かれた器の総称です。
青唐津、絵唐津、朝鮮唐津、三島唐津、粉引唐津、奥高麗などさまざまな種類があります。


瀬戸唐津茶碗「飯塚」
瀬戸ではなく唐津茶碗です。
瀬戸みたいな唐津茶碗という命名。

京焼

野々村仁清「色絵扇散文茶碗」

京焼といえば、上の写真にみられるような雅な茶碗が思い浮かびます。
平安王朝の雅な文化を取り入れた京焼のほか、尾形乾山に代表される個人陶芸家の「作品」としての京焼が展示されています。

※写真は「茶の湯のうつわ展 図録」「茶碗の中の宇宙展 図録」より

このほかにも、第3章では唐物茶碗として珠光青磁や灰被天目、高麗茶碗として井戸茶碗、呉器茶碗、熊川茶碗、伊羅保茶碗などの名椀が展示されています。

第4章の「懐石、宴のうつわ」、第5章の「煎茶の世界」は、なかなか他にはない特集で面白かったです。
特に「煎茶」は「煎茶道」みたいなものもあるのに結構マイナー。
あまり観る機会がないので新鮮でした。


出光美術館の休憩所から望む皇居桜田門


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