世界三大美術館のエルミタージュ美術館展 出展作品を画像付きでご紹介

「大エルミタージュ美術館展」レビューと70点以上の画像で作品紹介

最終更新日:2017年3月28日

世界三大美術館をご存じですか。

フランスのルーヴル美術館
アメリカのメトロポリタン美術館
そして、ロシアのエルミタージュ美術館

今、六本木の上空約200mにある「森アーツセンター」に、世界三大美術館のひとつ、「エルミタージュ美術館」がきています。
歴代のロシア皇帝が蒐集し愛蔵した美術品の数々。
「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」では、エルミタージュのコレクションのうち、

16世紀ルネサンス
17・18世紀バロック・ロココ

の巨匠たち「オールドマスター」の名画85点が展示されています。
世が世であれば、エカテリーナ2世とネズミだけが鑑賞できた名画。

鑑賞してきたので、楽しみ方を作品を紹介しながら説明します。
結論としては、とても面白い展覧会でした。
美術としてよりも知的好奇心的な意味でみてきましたので、感想を書いておきます。

ルネサンス・バロック・ロココといった時代・芸術区分ではなく、書かれている内容で分けてみたいと思います。

「大エルミタージュ美術館展」作品解説

ロシア帝国の女帝「エカテリーナ2世」の戴冠式を描いた肖像。
本展に出展されている作品の多くは、エカテリーナ2世のコレクションです。

ウィギリウス・エリクセン『戴冠式のローブを着たエカテリーナ2世の肖像』1760年代

エルミタージュ美術館の原型となるコレクションが開始されたのは1764年。
ルネサンス期の名画などもあるが、当時の同時代の画家の作品も収集していたことがわかる。

肖像


ティツィアーノ・ヴェチエッリオ『羽飾りのある帽子をかぶった若い女性の肖像』1538年

当時既に著名な肖像画家であったティツィアーノの作品で、「ティツィアーノの愛人の肖像」と呼ばれていた。


フランス・ハルス『手袋を持つ男の肖像』1640年頃


へラルト・テル・ボルフ(2世)『カトリーナ・レーニンクの肖像』1663年頭


ペーテル・バウル・ルーベンス派『ルーベンスと息子アルベルト』17世紀半ば以前


ジャンーバティスト・サンテール『ヴェールをまとう若い女性』1699年


ジャン-バティスト・グルーズ『スミレ色のチュニックを着た少女』1770年代


ルイーレオボール・ボワイー『女性画家』1788年頃


フィリップ・メルシエ『盆を持つ少女』1740年代末


トマス・ゲインズバラ『青い服を着た婦人の肖像』1770年代末-1780年代初め

キリスト教


ルカス・クラーナハ『林檎の木の下の聖母子』1530年頃


ベルナルド・ストロッツイ『トビトの治癒』1632年
聖書の「トビト記」の一場面を描きます。
天使はこの家族の守護天使。
右下の奇妙な魚はサタンに寓意でしょう。
左下の犬をみると、このころすでに白いフワフワの毛をもつくらいに犬の品種改良が進んでいたことがわかります。


アンニーバレ・カラッチの周辺の画家『洗礼者聖ヨハネ』
キリストに洗礼を施した「洗礼者ヨハネ」です。
バプテスマのヨハネ」とも言われますが、キリストのいとこであるとされるため、幼子イエスと共に描かれることも多いです。
絵画作品にはアトリビュートという「お約束」がありますが、この作品もヨハネのアトリビュートが描かれています。
まずは、長い十字架の杖。これを持っている少年がいたらヨハネだと思っていいくらいヨハネの象徴です。
十字架の上にはリボンがついていて、「Ecce Agnus Dei」(見よ、世の罪を取り除く神の子羊だ)と書かれています。
腰には革の帯をしめて、動物(らくだ)の毛皮をまといます。
子羊はいわゆる「神の子羊」ですが、これも共に描かれることが多いです。
ちなみに「ヨハネによる福音書」の著者とされるイエスの十二弟子のヨハネとは別人です。


カルロ・ドルチ『聖チェチリア』1640年代後半
音楽の守護聖人チェチリアを描いています。
意に反する結婚を強いられたチェチリアが、結婚式の間中オルガンを弾きながら祈り続けた場面を描いています。
豪華のサテンの服は、当時の高級貴族の娘の服装。


ポンペオ・ジローラモ・バトーニ『聖家族』1777年
聖家族」は、聖母マリア養父ヨセフイエス・キリストの3人を主題とした絵画で多く描かれています。
ただ本作品はもう一つのバージョンの「聖家族」です。
養父ヨセフは描かれず、左から聖母マリアの父の聖ヨアキム、マリアの母の聖エリサベツ、真ん中の赤子がイエス・キリスト、そして聖母マリアと、右下の子どもが洗礼者ヨハネ。ラファエロの描いた聖家族と同じ構成です。
ちなみに、描かれいるキューピッドのような赤子はキューピッドでは無く天使です。


バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『受胎告知』1660年頃


ジョヴァンニ・バッティスタ・ティエボロ『受胎告知』1724-1725年
誰もが知っている超有名な主題である「受胎告知」。
右側に聖母マリア
左側に受胎を告げる大天使ガブリエルが描かれます。
聖母マリアのアトリビュートは白百合、青いマント、赤い衣服です。
白百合は純血、青いマントは天の真実、赤い衣服は神の愛をあらわしています。


レンブラント・ハルメンスゾーン・ファン・レイン『運命を悟るハマン』1660年代前半


フセペ・デ・リベーラ『聖ヒエロニムスと天使』1626年


フランシスコ・デ・スルバラン『聖母マリアの少女時代』1660年頃


シモン・ヴーエ(伝)『聖母子』1639-1640年


フィリップ・ド・シャンパーニュ『預言者モーセ』1648-1663年


バルトロメ・エステバン・ムリーリョ『羊飼いの礼拝』1650年頃


バルトロメ・エステバン・ムリーリヨ『幼子イエスと洗礼者聖ヨハネ』1660年頃


フランソワ・ブーシェ『エジプト逃避途上の休息』1757年


クロード・口ラン『トビアと天使のいる風景』1663年

神話・伝承


羽の生えた小さな天使」はクピド(キューピッド)です。
ローマ神話の愛の神であり、愛の女神ヴィーナスの子とされています。
弓矢を持ち裸の少年のとして描かれることが多く、絵の主題にヴィーナスや愛が関わっているときに多く描かれます。
ギリシア神話のエロスと同一視されることもあります。
厳密には、天使ではなく神です。
クピドが絵画中でどのような態度を取っているのかが、絵の主題にも影響しています。
例えば、目隠しをしていれば盲目な恋。
眠っていれば別れ、など。


テイツィアーノの工房『鏡を見るヴィーナス』1560年代

ルネサンス後期、日本には鉄砲やキリスト教が伝来しました。
欧州にはゆがみのない鏡や真珠のネックレスが普通にあったようです。
ヴィーナスは美の女神ですから、当時はこのようなふくよかな女性が美女の頂点だと考えられていたのでしょう。


グイド・レーニの工房『エウロパの掠奪』1632-35年
好色で知られる神ゼウスが、人間の王の娘エウロパを掠奪するために牛に変身しているシーンを描いています。


フランチェスコ・フリーニ『アンドロメダ』1636年
オウディウス『変身物語』に出てくるエチオピアの王女アンドロメダです。
海の怪物への生け贄として岩に鎖で繋がれた有名なシーン。
この後、勇者ペルセウスに助けられ彼の妻となります。
ちなみに、アンドロメダの母はカシオペア。
カシオペアが海の神ポセイドンの怒りを買ったことによりアンドロメダは生け贄とされました。
ペルセウスが天馬ペガサスにまたがって救出しているシーンも多く描かれますが、本作はアンドロメダのみに焦点をあてています。


ペーテル・パゥル・ルーベンス『王太子の誕生』1622年


ペーテル・バゥル・ルーベンス『マリ一・ド・メディシスの戴冠式』1622年


ペーテル・バウル・ルーベンスと工房『田園風景』1638-1640年頃


フランソワ・ブーシェに基づくコピー『ヴィーナスの化粧』1740年代-1750年代


アンゲリカ・カウフマン『パリスの愛を受け入れるようにヘレネを説得するヴィーナス』1790年


ベンジャミン・ウェスト『蜂に刺されたキューピッドを慰めるヴィーナス』1786年


トマス・ジョーンズ『嵐、ディドとアイネイアスの物語』1769年

習俗・風俗


ニコラ・トゥルニエ(伝)『若いリュート弾き』


ディルク・ハルス『ホーム・コンサート』1623年
描かれた人物たちの服装は当時の貴族の服装です。
当時の貴族はこのように余暇を楽しんでいたのかもしれません。
バイオリンは現在でもほぼ同じ形で使われていますが、右のヴィオラ・ダ・ガンバ(バスヴィオール)はありません。コントラバスとなっていますね。左のリュートはもう見たことすらないです。


へラルト・ファン・ホントホルスト『陽気なヴァイオリン弾き』1624年


ヘラルト・ファン・ホントホルスト『陽気なリュート弾き』1624年





ドリアーン・ファン・オスターデ『連作「五感」』1635年頃
上から「嗅覚」「視覚」「聴覚」「味覚」


ヤン・ステーン『怠け者』1650年代
怠け者は当時でもダメだとされていたようですね。。
床にある靴は娼婦もあらわしているそうです。


ピーテル・デ・ホーホ『女主人とバケツを持つ女中』1661-1663年頃
17世紀の作品ですが、ドアの向こうの道路は舗装され、整然とした街路樹のようなものもみえます。


ヤーコプ・オヒテルフェルト『ぶどうを買う人』1669年


ハブリエル・メツー『医師の訪問』1660-1665年
恋の病を描いたパロディー調の作品。
西洋絵画にはよく犬が描かれますが、いろいろな意味があり多いのは「忠誠」だそうです。
西洋犬の品種改良って、どの時代にどこまで進んでいたのでしょう。
17世紀にはこのようなスパニエル系の品種がいたんですね。
この絵は「フレンチ・スパニエル」に似ていますが、14世紀からいたそうです。


ヤーコプ・ヨルダーンス『クレオパトラの饗宴』1653年


ダーフイツト・テニールス(2世)『厨房の猿』1640年代半ば


ダーフィット・テニールス(2世)『カード遊びをする人々』1640年代半ば


ダーフィット・テニールス(2世)『厨房』1646年


ピーテル・ブリユーゲル(2世)(伝)『スケートをする人たちと鳥罠のある冬景色』1615-1620年頃


ヤン・ブリューゲル(1世)『魚の市場(ペテロとアンデレの召命)』1608年頃


シャルル-アンドレ・ヴアン・ロー『スペイン風の読書』1755年


ジャン-バテイスト・シメオン・シャルダン『食前の祈り』1744年


ジャンーバティスト・グルーズ『未亡人と司祭』1782-1786年


ジャン-バティスト・ル・プランス『手相占い師への訪問』1775年頃


ジャンーオノレ・フラゴナールとマルグリット・ジェラール『盗まれた接吻』1780年代末


ルイーレオボール・ボワイー『テュイリュリー庭園での政治議論』1832年

風景


ベルナルド・ベロット『ドレスデンのツヴィンガー宮殿』1752-1753年噸


カナレット『ヴェネチアのフォンダメンタ・ヌオーヴエから見たサン・クリストーフォロ島、サン・ミケーレ島、ムラーノ島の眺め』1724-1725年


ヤン・ファン・ホイエン『オークの木のある風景』1634年


アールト・ファン・デル・ネール『月明かりの川の風景』1653-1656年


アールベルト・カイプ(伝)『川沿いの夕暮れ』1650年代


ヤーコプ・イザークスゾーン・ファン・ライスダール『砂丘のある海景』1670年代


クロード-ジョゼフ・ヴェルネ『海辺の岩』1753年


クロード・ロラン『港』1630年代末-1640年代


ユベール・ロベール『運河のある建築風景』1783年

その他


ヤン・ダーフィッツゾーン・デ・ヘーム『果物と花』1655年

ただの静物画にもみえますが、枯れたバラをしおれた植物もみえます。
日本風に言うと「もののあはれ」というか、美しいものも枯れていくということを描いているそうです。
日本の「小野小町の相図」はもっとストレートに、美人と名高い小野小町でも老い衰え死んで腐り骨になっていくさまを描いていますが、テーマとしては同じでしょう。


フランス・スネイデルス『鳥のコンサート』1630年代-1640年代
とても面白い作品。
真ん中のフクロウが指揮者で、まわりの鳥たちが不協和音を奏でている。
非常に写実的でありながらユーモラス。
この1世紀後には日本で伊藤若冲(鳥の若冲といわれ鳥を多く描いた)が活躍すると考えるとなにかしらの関係がありそうで(無いと思いますが)面白い。

赤いのはコンゴウインコ
くちばしの大きいのがオオハシ
クジャク
フクロウ
サギ
タカ
キツツキ

コンゴウインコはアメリカ大陸産ですし、クジャクは南アジア、大航海時代がなければ生まれなかった絵画作品ですね。

「大エルミタージュ美術館展」開催概要

「大エルミタージュ美術館展 オールドマスター 西洋絵画の巨匠たち」
http://hermitage2017.jp/

東京
森アーツセンターギャラリー
3月18日(土)〜6月18日(日)

名古屋展
愛知県美術館
2017年7月1日(土)〜9月18日(月・祝)

神戸展
兵庫県立美術館
2017年10月3日(火)〜2018年1月14日(日)